豊かな自然の中で自分と向き合える 「人生のデトックス」
「こんな小さな国に なぜ日本からやってきたの?」
留学中 よくたずねられました。
デンマーク人の彼らから枕詞のように発せられる 「小さな国に」という言葉。
その言葉を耳にするたび
かつてノルウェーやイギリス、スウェーデンを統制し、
その後 敗北に次ぐ敗北で国土を大きく失った歴史を思い起こさせました。
そんなデンマークですが、
現在の面積は 約4.3万平方キロメートル(九州とほぼ同じ)※
人口は 約570万人(兵庫県とほぼ同じ)です。
例え小さな国であっても 上の数字からも一目瞭然、
デンマークには(都市部やフェス等を除き)人があまりいません。
高い建物もなく(あっても5階建て位)、
広々と視界はひらけ 昔ながらの建物や
かわいらしい住宅や店、そして森や牧場等が点在していました。
フォルケホイスコーレは、基本全寮制です。
生徒、そして教職員も寝食を共にしながら学びます。
立地は比較的郊外であることが多いようです。
そのため学校周辺を散策していると、
ひょっこりと馬や牛、ウサギやリス等に遭遇することもしばしば。
建物に網戸はないので、すき間から虫たちが侵入しては
こちらも共存生活を謳歌しているようでした(泣)
1年間の留学中、少しでも多くの経験をしたくて 3校の学校を転々としました。
そのうちの1校、Engelsholm Højskole はアートがメインの学校です。
友人いわく 「村」と呼ぶに等しい場所のようで
16世紀に建てられたお城を改装して校舎や寮として使っています。
学校の隣には森と湖が。
お城の周りには堀がめぐらされ、その片隅に腰掛けて
ボーっとすることが好きでした。
聞こえてくるのは フクロウの鳴き声や、風にそよぐ草の音。
自然だけの音を耳にするのは 一体いつぶりだっただろう。
思えば物心ついてから、
勉強や仕事で 毎日毎日 時間に追われるように生きていました。
対人関係にも思い悩まされ、心も頭も飽和状態でした。
そんな中、ふわりと降り立ったデンマークという地。
人も、自然も、私をゆったりと受け止め
いっぱいいっぱいだったモノを 優しく拭い去ってくれました。
「こんな小さな国に なぜ日本からやってきたの?」
最初はうまく答えられなかったこの質問。
本当は すごくシンプルな答えであったのだと思います。
「フォルケホイスコーレを創った国だから」
かつて国が荒廃し、ヨーロッパでも最貧国同然であったデンマーク。
一部の貴族や聖職者が権力を握り、国民の多くは貧困と餓えに苦しみました。
170年の時を経て、
近年では 幸福度世界一の国として知られるようになりました。
その変革の中心となったのは フォルケホイスコーレの存在と、
そこで学んだ人たちであったと言います。
かつて国を大きく変え、今日まで少しずつ形を変えてなおも現存する学校。
「もしも日本にあったなら?」
この命題が私の原動力となっています。
→→次号に続きます
・参照リンク・
外務省HP
※加えて、自治領にフェロー諸島と 世界最大の島グリーンランドがあります。